デザインに閉じこもらないこと。これが僕の原点



もしも、人生を自分の思うがままにデザインできたのなら、それは幸せなことなのでしょうか? 僕の場合は、初めからデザイナーを目指したわけではありませんでした。イラストレーターに憧れて、その道の学校に行き、卒業してしばらくはイラストを描いていたのです。ファッション系でした。でも、同じスタイルで絵を描かなくてはいけないのが向いていなくて。もっと自分のスタンスを変えて表現できる仕事をしたいと思っていた時に、友達が「ファッションビルの広告の会社がデザイナーを募集してるぞ」と教えてくれて。デザインの経験なんてほとんどなかったんですけど、面接に行ったらなぜか合格してしまったのです。その頃メンズの服が今ほどデザインにバリエーションがなく、僕はレディースの服をアレンジした格好をしていました。それが幸いしたのかもしれませんが(笑)。
しかも、採用された肩書きが「アートディレクター」。ふつうは、アシスタントを経てデザイナーになり、その後、アートディレクターとなる場合が多いのですが、僕の場合は、いきなりでした。だから、アシスタントデザイナーにデザインの基本を教わって、でも、僕がディレクションをするという、変則的な始まり方だったのです。その分、人一倍仕事をしましたが・・・。
若かったこともありますが、「なぜ自分の思い通りのものが、あるいはそれ以上のものが作れないのだろう?」とつねに思っていました。デザインって、ひとりで完成できるものではないんですよね。だからスタッフは大切にします。コピーライターがいて、カメラマンがいて、その他にも様々なスタッフや、デザインを発注する企業の担当者がいる。つまり、コラボレートして物を作り出していくわけです。様々な人と出会い、それぞれの想い、考え方、感じ方を知る中で、自分の想像以上のデザインができあがっていく。その快感を知った時、アートディレクターの仕事が、よりおもしろくなっていったのです。デザインに閉じこもらないこと。これが僕の原点かもしれません。
