Vol.7 一瞬一瞬の、今を生きよう!

人生は積み重ねだと誰でも思っているようだ。ぼくは逆に、積みへらすべきだと思う。財産も知識も、蓄えれば蓄えるほど、かえって人間は自在さを失ってしまう。過去の蓄積にこだわると、いつの間にか堆積物に埋もれて身動きができなくなる。
人生に挑み、本当に生きるには、瞬間瞬間に新しく生まれかわって運命をひらくのだ。それには心身ともに無一物、無条件でなければならない。捨てれば捨てるほど、いのちは分厚く、純粋にふくらんでくる。
今までの自分なんか、蹴トバシてやる。そのつもりで、ちょうどいい。
(『自分の中に毒を持て』岡本太郎著/青春文庫)
岡本太郎といえば、日本を代表する世界的な芸術家として知らぬものはいない。みなさんはご存知だろうか?渋谷のマークシティーにある巨大な壁画『明日の神話』がレプリカではなく、本物であることを!私はこの連載を書くまで、まさか本物だとは思ってなかった。いや、驚きである。だって、あれだけの雑踏の中に無造作に、なんの防護もせずに世界レベルの絵を飾るなんて、あり得ない。あの巨大な絵は金額に換算したらきっと何十億とか何百億円という価値があると思うと、太郎の絵を盗むという輩がいてもおかしくない。
「グラスの底に顔があったっていいじゃないか」
「芸術は爆発だ」
岡本太郎は、わかりやすく挑戦的な言葉をはき、それを実行しつづけた人だ。今では老若男女を問わず、幅広い層に支持されていた太郎も、この本が出版された80年代は「奇異な人芸術家」としてしか見られていなかった。太郎の再評価は、2000年以降に盛り上がったといえよう。
さて、本書であるが、封建的な日本社会が大嫌いだった太郎が、一般人向けに書いた啓発書である。非常に独特な日本語表現が印象的で「無目的的」などという言葉が連発される。その奔放な生き方と原色を使った生々しい表現とは裏腹に、太郎の主張はとても「禅的」である。日本人や日本的なものを否定して、さらに否定しつくした先に、原日本人を体言しているかのようだ。そのドロリとした太郎の言葉にこそ、私たちの原型があるのだ。
私は、この本と出会ってから20年経つが、未だに太郎の影響下から離れられない。
迷っているあなたに、強烈なメッセージが襲い掛かってくる。
「道で己に出会ったら、己を殺せ!」
でも、なんだか爽やかな気持ちがする、とても不思議な本だ。
- ※「時代に流されない、ビジネス書を読もう!」は、今回が最終回となります。ご愛読ありがとうございました。